■ アーベントロート指揮 バッハ「マタイ受難曲」 @ケルン ■ 2003.11 |
■バッハ「マタイ受難曲」 @ケルン 「ギュンター・ヴァント」 ヴォルフガンフ・ザイフェルト( Wolfgang Seifert )著 根岸一美訳(音楽之友社) この本を読んでいて、今まで全く自分が注意を払っていなかった点に気付いて、 断片的に知ってたこと、また調べて初めて知ったことをまとめてみました。 きっかけは、ヴァントがケルンでカペルマイスターだった時期、 1946年以降毎年、聖週間にバッハのマタイ受難曲 (ケルンの伝統に基づくカット版、小規模編成) を三度ずつ指揮していたのを知ったことです。 アーベントロートはケルン時代、各シーズンの最後に必ず バッハ「マタイ受難曲」を振っていたというのは、TAHRAのライナーノートで知りました。 アーベントロートがケルンでカペルマイスターとして最後に指揮をしたのが、 1934年3月30日、バッハ「マタイ受難曲」だということも載っていました。 以前、この「3月30日」ということにピンときていなかったのですが、 ![]() < こちらのサイトの「その他の暦日計算」で復活祭などのキリスト教の移動祝日を計算出来る。 > こちらの「こよみのページ」でまず月齢を調べましたら 1934年3月31日土曜日が春分の日の後の最初の満月にあたり、 1934年4月1日日曜日が復活祭、そして復活祭の前の一週間が聖週間、 1934年3月30日金曜日は、「聖金曜日」の日になる。 (聖金曜日はキリストの受難の日、十字架にはりつけにされ死去した記念日。) ケルン時代のアーベントロートが、シーズンの最後にバッハ「マタイ受難曲」を 指揮したというのは、キリスト教の重要な祝日・復活祭へ向けての 一週間である聖週間での、地域社会における重要な行事であったのだ、 ということに自分はやっと気付いた次第です。 (なお、移動祝日である復活祭は4月になる年もありますので、アーベントロートが ケルン時代シーズンラストに「マタイ受難曲」を指揮した日は 必ず聖金曜日であったのか、それとも・・・という点に関しては現在不明です。) 復活祭(イースター)は「春分の日の後の、最初の満月の後の最初の日曜日」であり、 532年周期で一巡するそうです。 (復活祭では、受難の金曜日(Karfreitag)に磔になったキリストが 三日後によみがえったことを祝う。キリスト教にとって最も神聖な行事。) クリスマスと違って、復活祭は毎年同じ日ではなく、「移動祝日」。 「春分の日の後の、最初の満月の後の最初の日曜日」になったのは 325年のニケア公会議で正式に決められてから、とのこと。 (それ以前はユダヤ教の過ぎ越しの祭りとともに祝われてきたそうで、 イエスが最後の晩餐をしたのが過ぎ越しの祭りのときであったとのことです。) キリスト教では、クリスマスと同様に大事な時期である イースター(復活祭)前の一週間を聖週間と呼んでいて、 この時期は、福音書からイエスの受難の場面を描写したところが選ばれ、朗読されていた とのこと。 マタイ受難曲はイエスの受難がテーマなので、 マタイ受難曲はどういう曲かを知っていた上で、キリスト教の行事が身近であれば、 「3月30日→復活祭の前の一週間・聖週間の頃」と、すぐにぱっと分かったのでしょうけれど、 私自身はキリスト教の行事に疎くて(何しろ固定祝日であるクリスマスしか頭に浮かび ませんでしたので)こういうことに気付くのに時間がかかってしまいました。 調べてみて、色々なことがつながって、またひとつ、自分にとってのなぞなぞが解けた様な気が しました。 2003.11 ◇ ◇ ◇ ![]() こちらの「こよみのページ」で調べましたら 1923年3月30日、ケルン・ギュルツェニヒ第12回演奏会 アーベントロート指揮「バッハ:マタイ受難曲」 (この記録は、 Clemens Kraussのページ を 作成されているいちさんから頂戴したコンサートプログラムの画像より) この日も聖金曜日(Good Friday)でした。 ドイツのお住まいの方にも以前質問させて頂いたんですが、 他の地域では聖週間にワーグナー:パルジファルを必ず演奏する、という所もあるそうです。 (ライプツィヒのThomanerchor・Gewandhausorchesterはマタイ受難曲やヨハネ受難曲を演奏。) 2005年のケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団の演奏会スケジュールを見ていたら 聖金曜日にバッハ:マタイ受難曲がカペルマイスターの指揮で 演奏される予定になっていました。そして2006年の聖金曜日にはバッハ:ヨハネ受難曲。 今でも聖金曜日には、ケルンのカペルマイスターはバッハ:マタイ受難曲やヨハネ受難曲といった曲を ギュルツェニヒ管弦楽団の演奏会で指揮する様です。 2005.06 追記 2006.03 追記 |